『数学のおもしろさ』を読んで(解答:前編)
書名:『数学のおもしろさ』(原題『Mathematician's Delight 』)
著者:ソーヤー(W. W. Sawyer)
訳者:東健一
感想
下記の引用の通り、この本では一割ほど新しい発見ができたと思う。
P.50
全体の十分の九は単に既知の事柄を思い出させるためで,残りの十分の一が新しい事柄であるというような本を読むことはかしこい.
上記は自分も非常に納得であり、加えて数学の研究方法、ひいては学習の作法についてとても示唆に富んだ著作であった。
また、イギリスの著作物は保護期間が70年のため、1942年に書かれた本書の原著はすでに各種フォーマットで無料電子化されている。
https://archive.org/details/MathematiciansDelight
本エントリでは例題における自分の解答を記載し、他の読者の便宜を図れればと思い書いたものです。
誤りがあれば、是非ご指摘をいただけましたらと存じます。
(下記ページ指定は、『数学のおもしろさ 第31刷』に基づいております。)
解答
P.13
この初めの例題「幾何に関する数種の実験」は、他の例題とはちょっと毛色の違った問題につき、この部分からあまり根を詰めないほうが良いと思う。
A1
AC=BD
AO=BO
0<∠AOB<90°
A2
下記URLを参照
平面充填 - Wikipedia
A3
yを子供の影の長さ、xを街灯から子供までの距離とすると
3:y+x=1:y
y+x=3y
y=x/2
子供の影の長さは x/2[m]である。(i)(ii)(iii)については、上記結果の縮尺サイズで歩けば良い。
A4
現在位置の緯度・軽度・高度、および現在日時に影響される。
A5
xを男の影の長さとすると、
1.7:3=2:x
x=6/1.7
男の影の長さは 6/1.7[m]である。
A6
より、点Pは直径ABの円の、円周上にある。
A7
模型の大きさは長さ6/100[m]、高さ4.5/100[m]、速さは時速30/100kmにする。
A8
くもが這う道筋は、厚紙の対角線上にのる。
A9
メルカトル式投影図法の誤差を調べる。
メルカトル図法 - Wikipedia
A10
スネルの法則より、
を満たす角度∠AXPを決定する。
A11
A10と同様に数値的に値を求めることができるが、実験的には、空気に対して相対屈折率が2の△PQRの形のプリズムを用いるなどし、
その光路から求められると考えられる。
P.65
A2
A(アルバート)とB(ベッティ)が同時に非番になった日から、
5×9=45日後に次の非番が重なる。
A3
【前提】
火の見当番は下記日数毎に巡ってくる。
A(アルフ)3日
B(ビル)4日
C(チャーリー)5日
D(デイヴ)6日
E(エドワード)7日
彼らは金曜夜に一斉に勤務についた。(i)
AとBが次に一緒になるのは、金曜から3×4=12日後。
AとCが次に一緒になるのは、金曜から15日後。
BとCが次に一緒になるのは、金曜から20日後。
AとCが出て、Dのいない日は、金曜から15日後、45日後…。(ii)
金曜にクラブに行けない日は
A(アルフ)3×7=21日毎
B(ビル)28日毎
C(チャーリー)35日毎
D(デイヴ)42日毎
E(エドワード)は毎週行けない。(iii)
E以外は、一週間をいずれはローテートする。※modulo を使うと曜日まで分かりますね。(x mod 7 で 0 が金曜日)
A4
A,B,Dは明らかに12日毎に一緒になるので、
12×5×7=420日後の金曜日にA,B,C,D,Eが再び揃って勤務することになる。
A7
8[cm]の小箱は3つ、6[cm]の小箱は4つで、24[cm]になる。
つまり、1辺24×2=48[cm]の大箱を準備すれば良い。
P.67
賞杯争奪戦の問題
勝ち抜き勝負に参加するチームがnつ存在する場合、(n+1)回試合をしなければならない。
P.68
収入の問題
3ヶ月毎に5ポンドずつ昇給する場合。
初めの1年目は
増加より、俸給は50*4+30ポンド。
2年目は、
増加より、俸給は50*4+110ポンド。
上記2式の差を取ると、
1年に80ポンド増すことになる。1ヶ月毎に1ポンドずつ昇給したら、
より、俸給は1年に144ポンド増すことになる。週に1シリングずつ昇給したら、
より、俸給は1年に2304シリング=115ポンド+4シリング増すことになる。1年に10ポンドの昇給は、
より、半年に 5/2 ポンドの昇給を意味する。1年に10ポンドの昇給は、
より、3ヶ月に 5/8 ポンドの昇給を意味する。1年に10ポンドの昇給は、
より、1ヶ月に 5/72 ポンドの昇給を意味する。1年に10ポンドの昇給は、
より、1週間に 5/1152 ポンドの昇給を意味する。
P.77
A4
上側の計算尺の10の半分の部分に、下側の0を合わせる。
上側の計算尺の10の数字にあたる部分の、下側の数字が10の平方根である。
A6
0.301/0.0212=14.19811320…
≒14.2
上記より、15年かかる。
A7
この章の意に沿って対数を使う方法では下記計算式より、
普通の文意で計算するなら下記計算式より、
1215.7665…≒1216 個であることが分かる。
P.84
円筒(紙片では筒(?)が旧字体なのか、土偏に壽で、"土壽"のような筒が使われていました)の体積
周の長さをMとすると、紙片の通り LT(M-3.14T) で体積が求められる。
「沖合 n 哩(マイル)の地点を見るためには,目が水平線から 2n^2/3 呎(フィート)以上の高さになければならぬ」について。(括弧は補足、原文にはない)
メートルで考える。
R を地球の半径、h を目の高さ、n を見ることのできる沖合の距離とすると、
より
上記より、赤道半径 R = 6378km(理化学辞典第5版より)とすると、
沖合 n km の地点を見るためには、目が水平線から m 以上の高さになければならぬ。
P.86
A4
(i) 正
(ii) 誤
(iii) 正
(iv) 正
(v) 正
(vi) 正
(vii) 誤
(viii)正
P.92
自然落下
エネルギーの保存則より
より
紙片では重力加速度 g=9.806[m/s^2] が丸められて、
になっている。
底に到達した時の落下速度
エネルギーの保存則より
より
紙片では重力加速度 g=9.806[m/s^2] が丸められて、
になっている。
解答:後編に続く。