『書き下ろし日本SFコレクション NOVA9』を読んで
書名 :『書き下ろし日本SFコレクション NOVA9』
責任編集:大森望
感想
今回のアンソロジーで好きな作品は下記2作品で、それぞれ簡単に感想を書きます。
※ネタバレを含みます。
サロゲート・マザー(小林泰三)
まず始めの4ページが気持ち良い。これは、単にこき下ろしに溜飲が下ったのではなく、その論理的な文章にである。
そしてそれからは不気味な通奏低音を伴う、いつもの小林泰三さんの文章が続く。
しかしながら、「よた付きながら、逃げる豚を転がるように取り押さえ、電気スタニングを繰り返す」(P.183)ヒトと、
「産着に包まれているポルコとぶりぶりざえもんとぶーりんに接吻した」(P.193)ヒトでは、何かが決定的に変わっている。
この作品で母性のように描かれているものは、それを包含する概念「愛」であると考えられ、それはこの場合、全然非論理的なものではない。
赤ん坊の泣き声、動物の鳴き声と泣き声も然り、「豚の悲鳴と人間の悲鳴が木霊し、もう何が何だか。豚が人だか、人が豚だかわか
らなくなっていった」(P.183)それでいいのだと思います。